胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)…頭痛、めまい、耳鳴り、目の奥の痛み。検査結果「異常なし」の治療

頭痛、めまい、耳鳴り、目の奥の痛み
これだけの症状があれば、まず風邪を疑い、熱をはかり、平熱なのにおかしいぞと内科を受診というところでしょうか。

色々な検査をして、それなりの病気が見つかればひと安心(?)となりますが、「異常なし」の診断が出されると、今度は眼科、耳鼻科、脳神経外科・・・と言うふうに、「ドクターショッピング」をされる方も珍しくありません。

そしてどの科でも異常なし、健康そのもので大変結構な事なのですが、本人にしてみれば「症状があるのでなんとかしてほしい」と結局内科へ戻り、対症的に頭痛薬やビタミン剤、安定剤などを処方されます。

病名は「緊張性頭痛」、「更年期障害」、「自律神経失調症」など、患者さんが納得しやすいもので決着がつきます。そして原因はと言うと、「ストレス」が最近よく使われる単語です。これで患者さんは何となく納得してしまいます。
確かに、ストレスは自律神経の交感神経を緊張させ、内臓や筋肉の不具合を引き起こしますので、これで正解だと思います。

ところで、どんなストレスが心身に影響を与えるのかと言うと、精神医学の祖フロイト曰く、「無意識の意識」にある「抑うつされた感情」だそうです。
「抑うつされた感情」とは、主に「怒り」、「悲しみ」で、「嬉しい事」、「楽しい事」は入らないようです。
ですから、好きなことをして遊び疲れたり、趣味に熱中して長時間おなじ姿勢でいても体のどこかが痛む、ということはなくても、嫌な仕事を言いつけられた時などは、ちょっとした動作や普段では何ともないような負荷で痛みが出ることがあります。

しかし、どういう事柄に対して自分が抑うつされた感情を抱いているかは、無意識の中にあるのですから、本人にはわからないようです。
催眠術でもかけてもらえれば、心の中で何が本当のストレスになっているのかわかるかも知れませんが、難しそうなので諦めるしかありません。とりあえず不具合を起こしているところを治療して症状を取っていくよりありません。

それでは上記の症状(頭痛、めまい、耳鳴り、目の奥の痛み)の場合はどこに不具合をおこしているのかというと、典型的なものでは「胸鎖乳突筋」があります。鎖骨から耳の下に伸びる筋肉です。作用としては、顔をあっちこっちに向ける筋肉です。

胸鎖乳突筋


胸鎖乳突筋
「Clinical massage」James H.clay/David M.pounds著・医道の日本社刊

ですから、交通事故などでムチウチになり、「胸鎖乳突筋」を痛めると、頭痛、目の周りの痛み、耳鳴りといった俗に言われる「自律神経失調症状」が出現します。

以前からこの症状は、首の椎骨動脈が刺激により攣縮を起こしたことで脳への血流不全となり、そのために起こるものだと言われていますが、デスクワークでパソコンや書き仕事でうつむき加減に長時間固まったように同じ姿勢で過ごしておられる方にも、同じ症状が見受けられることから、個人的にはこの「胸鎖乳突筋」という筋肉の硬結によるものが「自律神経失調症状」を引き起こしているものではないかと思っています。
つまんでみて硬結が確認できることもあれば、肉眼的にひと目でわかるほどの方もおられます。

胸鎖乳突筋における関連痛パターンの例


胸鎖乳突筋における関連痛パターンの例
「トリガーポイントと筋筋膜療法マニュアル」Dimitrios Kostopoulos & konstantine Rizopoulos著・医道の日本社刊

我々治療家は、マッサージや牽引、低周波、光線治療などで罹患筋の緊張を取るようにしていますが、この症状は、えてして仕事が忙しく(ストレスが多く)治療に来る時間も無いような方に多く見られますので、自分で「胸鎖乳突筋」をつまんでみて硬くなっているようなら、耳の下あたりから鎖骨までの間を押し付けないように、つまむようにしてマッサージしておいてください。(やみくもに押し付けると頚動脈や頚静脈を圧迫してちょっと違う次元に行く事もありますから、ご注意ください。)
少し楽になるかもしれません。

耳の下あたりから鎖骨までの間を押し付けないように、つまむようにしてマッサージ


耳の下あたりから鎖骨までの間を押し付けないように、つまむようにしてマッサージ
「Clinical massage」James H.clay/David M.pounds著・医道の日本社刊

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