神経痛~神経に沿っての痛み・しびれの本当のこと、知ってますか?

「神経痛」といえば、よく聞くのが坐骨神経痛、上腕神経痛、などがありますが、「神経痛」というものを勘違いされている方がけっこう多いようです。
腰から太もも、ふくらはぎにかけて、肩から上腕、指先までと神経に沿って、痛んだり、しびれたりするのを昔から「神経痛」などと言いますが、いかにも神経自体が痛みを出しているかの如くに解釈されている方がおいでます。これは間違いです。

神経は「痛みを出す」のではなく、「痛みを脳へ伝える」器官です。

正確には、神経の末端部のセンサー(侵害受容器)が損傷部から放出される特定の物質に反応すると、そこに微弱電流が発生します。それが電気信号となり、神経を伝い、中枢である脳へ届き、そこで「痛み」と判断されます。この末梢から中枢への痛みの経路が「知覚神経」です。ここをよく覚えておいてください、「末梢から中枢へ」、です。
これとは逆に、中枢から末梢の筋肉などに指令を出して手足を動かす神経は「運動神経」です。
これらの神経の情報の伝達方向は何があっても変わりません。原始時代から現代にいたるまで、これからも。

と、思っていましたが、多くの病院の診察室では、この生理学の常識が変わります。
上肢や下肢に「痛み」や「しびれ」があり、MRIの画像にそれらしい圧迫箇所があると、待っていました、とばかりに
「この部分でヘルニアが神経を圧迫しているので、しびれや痛みはそのために起きています」
と、なんともありがたいお言葉を頂きますが、よく考えてみてください。

このお言葉がどういうことかと言うと、つまり、背骨のほうで神経が押さえられた結果、そこで神経のセンサーが反応して腕や脚の末梢方向に向かい電気信号が伝わり、そこで腕や脚に分布するセンサーを何らかの方法で反応させ、さらに今度は脳(中枢)へと方向を変えて電気信号を伝えているということです。

<背骨なのに神経センサー反応??> ⇒(まさかの逆走発生!?) ⇒ <腕や脚(末梢)へ電気信号が伝わりさらに反応??> ⇒ <脳(中枢)へ届き「痛み」と判断>

JFK暗殺時の「魔法の銃弾」さながらの経路をたどりますね。
まさかこんな摩訶不思議な現象が起ころうとは、神様も想像し得なかったでしょう。

何気なしに先ほどのセリフを患者さんに言われる先生方、もし中学教師に転職される機会があっても、理科の授業だけは受け持ってほしくないものです。

先に述べたように、神経は末端のセンサーが発痛物質に感作されることにより電気信号を発生させます。
脊髄や神経根の部分は電気信号を伝える電線の役割ですので、センサーの機能はありません。つまり、圧迫されても電気信号が発生することは無いといわれています。
もし、ヘルニアが針のように直接突き刺されば別ですが、自然界ではありえません。

それでは、しびれや痛みの原因は?
血管炎や神経炎、骨腫瘍、肉腫などのまれな病気が、腰痛や頚痛の人に限って頻繁に出現するはずもありません。
あとは皮膚と筋肉の問題です。
やはり人体のしくみに従った考え方をすれば、筋肉の損傷部から放出される発痛物質によりセンサーが反応して、【正式な経路】で脳に伝わり「痛み」と判断されているというのが正解でしょう。

しかし、今でもこれほど多くの患者さんが「神経が押されているから痛いのですよ」との医師の言葉を、なんの疑問も持たずに簡単に信じ込んでしまうのは、
「自分の痛みはひどい」「長く続いている」「この痛みが単に筋肉のせいであるはずがない」「きっと骨や軟骨に何かが起こっているに違いない」「いや、もっと複雑なものかもしれない」
と思い込んでおられるからでしょう。

そこに白い巨搭の威厳が加われば、
「あー、やっぱり神経ですか、なんとなく私もそんな感じがしていました」
と、白衣の信者になってしまいます。誰でも自分の思いと同調した意見を持つ人を信頼するものです。

確かに、一般的なイメージでは、筋肉の問題ならば、運動をして筋肉痛になったあとのように湿布でもはっておけば簡単に治ると思われがちですが、実際はそうはいかないのが筋肉の厄介なところです。
筋肉は交感神経の影響をもろに受けますので、心理的なストレスでもこわばり、痛みを出します。
なぜいつまでも痛いのか、この原因は何なのか、などとイライラするだけでも交感神経が緊張し、また悪循環が生まれます。

さらに、痛みが長期(3~6ヶ月程度)になると、今度は脳が「痛みの状態」を記憶しますので、「痛みのある状態が通常である」と認識します。
ですから、マッサージや電気治療でこわばった筋肉をほぐしても、「通常の状態」 に戻そうとまた筋肉をこわばらせます。

よって、脳が関与する前の初期の段階での治療がベストなのですが、MRIやCTを撮り、その説明を真に受け、動作制限や安静の指示を守り、そのために余計に筋肉をこわばらせ痛みが増してまた検査、気がつけば半年、一年経ってしまい脳への刷り込みが完了するという訳です。

なかなか難しいところですね・・・。

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