早期治療のススメ

今回は、早期治療のススメの、ちょっと恐ろしいお話です。

例えば、膝の関節の痛みの場合。
痛みの発生原因は、主に大腿内側の筋肉のコリによるものです。症状として、膝の曲げ伸ばしで痛みがあります。捻った、ぶつけた、冷えたなど、そうなった原因はいろいろありますが、たどる経過にはさほど関係ありません。

膝の曲げ伸ばしで痛みを感じるので、痛みを避ける為にだんだん曲げなくなります。接骨院の立場から申し上げると、治療するのはこの時点でも遅いくらいです。そのうち治るだろうと、体に変な自信を持たないことです。

大川接骨院(金沢) 膝の関節の痛みから波及する痛みの分布図膝の関節の痛みから波及する痛みの分布図
「トリガーポイントと筋筋膜療法マニュアル」 Dimitrios Kostopoulos & konstantine Rizopoulos著・医道の日本社刊

1か月もすると、筋肉が縮こまり正座ができなくなります。「正座ができなくても日常に差支えない」と言い切る方は、これ以上読まれる必要もありません。
正座は、大腿の裏側と、足首の底屈(足の甲をスネと一直線にする)によりふくらはぎの裏側を目一杯縮めます
例えば、膝が半分しか曲げられないと、それらの筋肉も半分しか縮みません。目一杯縮んで伸ばすからこそポンプ作用で筋肉内に血液が出入りし、柔軟性が保たれます。中途半端な伸び縮みでは血行も悪くなり、その結果、筋肉にコリ(硬結)を生じ痛みが出ます。

ですから、長期間にわたり膝に痛みのある方は、膝の裏、位置的にはふくらはぎの上の方にも痛みを訴えます。そして、ふくらはぎに生じたコリはアキレス腱近くまで波及し、ヒラメ筋までこわばらせる事となり、内くるぶしや足裏まで痛みやしびれを出します

膝の関節の痛みから波及する痛みの分布図 大川接骨院(金沢)膝の関節の痛みから波及する痛みの分布図
「トリガーポイントと筋筋膜療法マニュアル」 Dimitrios Kostopoulos & konstantine Rizopoulos著・医道の日本社刊

こうなる頃には膝はもちろん曲げられませんし、伸ばすにも膝の裏が縮み込んでいますので真っ直ぐにも出来ず、もうどこが痛いのかもわからない程になります。
動かさないからスネやふくらはぎの循環が一層悪くなり、指で押さえた跡が残るくらいにむくんできます。

初めはちょっとした膝の内側の痛みでしかなかったものが、早期治療をせず痛みを我慢し続けてしまったばかりに、語るも無惨な結果になるわけです。

腰の場合はもっと簡単です。
何かの拍子に腰を痛めます。もちろん筋肉です。
(骨を傷めるにはそれなりの外力が要ります。階段から落ちるとか、車にでもはねられるとか、高齢者が尻もちをつくとかのいわゆる骨折です。それを除外しての話です。)

腰を痛め、前屈、後屈が出来ない場合、たいていの方は腰を少し、30度くらい曲げて痛みをしのぎます
このまま時間が経てばお尻の筋肉は固まります。膝を抱えてお腹にまでつけるとお尻の筋肉は伸びますが、それが出来ないということは、当然股関節も曲げられない状態です。
お尻の筋肉を伸ばせないということは、腰から臀部、さらに臀部から続く大腿の裏までが縮み込んでいるということです。
痛みやしびれは、そのこわばった筋肉に出ます。よって、腰から臀部、大腿裏からふくらはぎまでが痛みやしびれの発生範囲です。
そして、こわばった筋肉は持久力が無いので、歩行によりすぐにでもギブアップし、少し休憩することにより筋肉が少し回復して、再度歩行が可能になります。

『症状としては、数十メートルから数百メートルの歩行にて腰部から下肢の痛みやしびれのため歩行困難となり、しばらくの前屈姿勢による休憩をはさむと再度歩行が可能というのが特徴である』

これは最近流行している「腰部脊柱管狭窄症」の説明ですが、腰の筋肉を痛めて進行した症状そのままですね。
「脊柱管が狭くなったことによる内部の神経の圧迫、血管の血流不足によるものか」、とされていますが、断定できないのは結局わからないからなのでしょう。
原因が筋肉にあるということにすれば説明がつきますが、そう言ってしまうと骨は削れません。
それでは、歩けなくなって少し休めば、脊柱管(脊髄が通る背骨の穴)が広がって回復するのでしょうか?何とも都合のいい骨ですね。
「腰部脊柱管狭窄症」なるものは、しょせん、MRIが普及してからの病気(?)ですが、60歳過ぎた人の腰を撮ればたいがい一つや二つ背骨に狭くなっているところは見つかります。それで骨を削らなくてはならないのなら、日本中の整形外科の手術室は、流行期のインフルエンザの患者なみの人数を毎日こなしていかなければなりません。

何かの拍子に腰の筋肉を傷めただけのものが、早期治療をせず痛みを我慢し続けてしまったばかりに「腰部脊柱管狭窄症」などという病名を付けられ、治療として骨を削られる結末になるわけです。

こんなことばかり言うと、多くの人々が崇拝する最先端の医療にケチをつけているように聞こえるかもしれませんが。
とにかく、言いたいのは痛みは早めに治す、わざわざ根気よく全ての症状が出揃うまで我慢することはないということです。

痛みが長く続くと、その痛みの信号を受け取る脳の一部分が歪み、慢性痛になります。

「私の痛みは慢性だから」

これは、本当の慢性痛の怖さを知らない人の言う事です。

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