「骨盤がずれる」

これまたよく聞く言葉です。

しかし、骨盤の関節は仙腸関節のみです。
(関節と呼べるかはわかりませんが、恥骨結合も存在しますが軟骨でくっついていますので、ここが離れるときは相当な外傷がある時で、その時には骨盤内の内臓もかなり損傷を受けていると思って下さい。)
その関節は仙骨(腰椎の下の骨)と、腸骨(骨盤のちょうどベルトのかかる骨)が結合している部分で、「不動関節」と言われ、結合面積は百円ライターほどの大きさです。
上半身の重さすべてをここだけでささえているのですから、結合性と靭帯の強さはすごいものです。

もしこの関節が緩くて簡単にずれるとしたら、スキーや体操の選手がジャンプをして、着地の際に背骨が骨盤内に陥入してしまい、競技前より上半身が短くなっていくことを確認できるでしょう。

この関節が動くときは唯一、出産の時だけです。
神様はうまく人の体を作られたもので、女性が妊娠したときは出産を助けるために、骨盤の靭帯を緩ませるリラキシンと言うホルモンを出して骨盤を広げます。
熟練した整形のドクターはその関節のレントゲン写真を見るだけで経産婦の区別がつくと言われます(関節が荒れているらしいです)。

あくまでも広がるだけで、上下方向にスライドするはずもなく、ましてや左右方向にスライドすることもありません。しかし仙腸関節を圧迫した時にゴキッと動くこともあり、「へぇ?動いた」と思うこともあります。
だからスライドとまではいかなくても、広がった仙腸関節の半開きが閉まるという感覚はあります。

それでは、ちまたに言われる「骨盤のずれ」とは何を指してのものか?
まさか脚の長さが違っているからと言うわけでもないでしょうが。

素直に仰向けに寝れば、その人の姿勢のくせにより右、あるいは左上がりになることの方が多いでしょう。
脚の長さが違うと指摘された、と言う患者さんも時折見かけます。極端な差は、まともに大腿骨が股関節に納まっている限り、事故などで骨の一部が欠損したか、先天性の脚の短縮以外にはありえないことです。
人体は左右対称ではないのだから少なくとも小差はあります。(肝臓は右に大きくなっているから、バランスをとるため左脚が軸足となる、小児の頃から何十年たてばそれらしく差ができて当然)
それに背中と腰の筋肉に引っ張られ、どちらかに傾くのが普通だと思います。

たとえば立ってレントゲン写真を撮るときは、レントゲン技師は骨盤の写真の指示を受ければ骨盤のみに照準を合わせ、ましてや肩の高さや姿勢には口を出しません。
「はい、体を真っすぐにしてください」というのみです。
寝て撮るときは台に真っすぐな線が引いてありますから、頭と股の中間の線に合わせるように寝かせて撮ります。よって、頭と骨盤の間の背骨は曲がっていようがいまいが関知せず、あとは医者が勝手に判断してくれ、との写真が出来上がります。
また、骨盤の写真を撮るのに、頭から骨盤まで一枚の写真で撮れと言う先生もいません。そんな大きなフィルムもありませんから。

片方の膝が曲がっていて骨盤が傾いて見えるのもあれば、姿勢が悪くて腰椎が曲がり、骨盤がどちらかに引っ張られて傾いていたりするのがほとんどです。ぴったり狂いもなく背骨と直角を保っている骨盤はなかなかお目にかかれません。
宝塚のトップなら、あるいは・・・。

足先の通常5ミリ、10ミリの違いはあたりまえ。(特に骨折などの疾病であきらかに長さの違う場合を除けば。)試しにあお向けになり、短い方の脚を誰かに「えい!」と、引っ張ってもらってみてください。
骨盤の傾斜がまっすぐになり、たぶん脚の長さは揃います。(引っ張りすぎて膝を痛めないよう)
まぁ、揃ったからといってさほど何の意味もありませんが。

ある報告によると、仙腸関節は0.5ミリから2ミリの動きがあるとしていましたが、そのわけのわからない極小単位の数字が、人体最強といわれる腰部の筋肉に何の影響を与えるというのでしょうか。
腰部に限らずあらゆる病気の根幹のように言う先生もおいでますが・・・。

人類は脚の上に胴体があり、さらにその上に首が載っています。 こ
のバランスをとる筋肉を姿勢筋と呼びますが、この筋肉は瞬発力には欠けるが、持続性に長けていますので、日常生活の負荷にはびくともしません。
腰や骨盤の筋肉はデリケートだ、あの姿勢が腰に悪い、あの座り方が骨盤に悪いなど、さほど関係ありません。
その程度で簡単にどうにかなる骨格筋ならば、人類はとうの昔に二足歩行を諦めていたでしょう。進化の証は、腰周辺の筋肉が強くなったということです。

レントゲン写真やMRI画像で「骨折」、「腫瘍」、「感染症」以外のことを言われた時には、無視を決め込んでも構わないと思います。
世間に広まっている骨盤のずれ、それでは、「骨盤のずれを手術で治した」と言う人はおられるのでしょうか?意味もないヘルニアや膝関節の手術をしたがる先生方が、そんなうまい話を放っておくはずがありません。
それほど議題にも上らない意味のないものなのでしょう。

・・・あくまでもここだけの話で・・・。