腰方形筋と言えば、知っている治療家の方は知っている、知らずに一生を終える先生もおいでる、という結構マニアックな筋肉ですが、ギックリ腰の原因の半分は占めるのではないかと思える筋肉です。

この「ギックリ腰」、何が「ギックリ」するのでしょうか。
よく腰の骨がずれた、はずれた、などと言いますが、骨で「ギックリ」はしません、100%筋肉で起きる現象です。

中腰になって、あるいは体を捻った拍子に、たかだかそんなことで起きるのは、筋肉なればこそ。
階段から落ちた、骨のもろい人が尻餅をついた、車に撥ね飛ばされた、などは、骨折が疑われますので「ギックリ」といったレベルではなく「ボッキリ」といったところでしょうか。

では、「ギックリ」とはどんな状態をさすのでしょうか?簡単です、筋肉の急激な収縮(攣縮)です。ギュッと強張った状態です。
筋肉内の部分的なものもあれば、その筋肉全体が石のように硬くなっているものもあります。

左:「トリガーポイント・マニュアル-筋膜痛と機能障害Ⅲ」監訳:川原群大 エンタプライズ株式会社刊
右;「ID触診術」鈴木重行・平野幸伸・鈴木敏和著・エヌ・ティー・エス刊

この腰方形筋の場合、位置的にはわき腹の奥にあたるため、ここを痛めると自身の手で骨盤の上、ウエストをギュッと絞った格好で歩きますので、見た目だけでもそこそこの診断ができます。
しかし、なにぶんにも深い所にある筋肉ですので、触って確認するのはなかなか困難です。
普通で困難な程ですから、少々肉付きのいい方のその筋肉を触るのは不可能に近いです。触れなければ思うような治療ができません。

長年こういう仕事をしていますが、やはり目に見えて痛みが取れればいいのですが、どうもこの筋肉だけは好きになれません。ですから慢性の経過をたどる事も多いのかと思われます。
そしてこの手の、この部位の痛みを昔の整形外科の教科書(今でも中身は同じですが)に言わせると、変形性腰椎症椎間板障害、ともすればヘルニア、最近の流行なら脊柱管狭窄症でおきることになっていますが、それはあくまでも、まずレントゲン、MRIといった風に筋肉を通り過ぎて骨や軟骨に原因があると決め付けて診ているからこそつく病名です。

何度も書きましたが、痛みを起こしているのは筋肉です、軟骨にも骨にも神経はありません、骨折して痛いのは骨膜が刺激をうけるからです。

いまだに、医療機関で腰椎に異常があるやら無しやらの説明を受け、「椎間板ヘルニアのしおり」なるものを渡され、不安におとしめられる患者さんは増えています。
なぜこのような患者さんが増えるかは、世界的に見た圧倒的な日本のMRIの普及率にあります。画像としてヘルニアや椎間板のヘタリ具合を証拠として見せられるからに他ありません。
「ほら、ここがこうなっているでしょう。」などと言われた日には、そこが痛みの原因かどうかなどは疑う余地もありませんし、熱心に説明してくださる先生が本気でそう思っている以上、どうにも出来ません。そういう先生に出くわしたことが運のつきと思ってあきらめてください。

「正常な老化現象」
なぜこの言葉がいえないのでしょうか?少し骨が出ていればそのせいにし、軟骨が磨り減ればそのせいにする、これでは年配者はすべて一生診療の網から抜け出すことは出来ません。
いまだに骨が変形しているだとか、そのせいで神経がつっかえている、などと説明される先生方、骨の変形が進めば神経がどうかなるのでしょうか?はたまた、神経が圧迫されると痛みが出るのでしょうか?
この疑問に正確に答えられる先生は、たぶん頻繁に手術を勧めることはないと思われますので、もしも手術を勧められたときには一度訊いてみましょう。

「神経に触っているのだから痛いのは当たり前です。」
と、言う先生には二度とお目にかからない方が体のためです。

そしてこの腰方形筋、ダイレクトにアプローチするのは難しいため、どうしても満足いく結果、即効性のある治療は期待出来ませんので少し根気を持って治癒を目指された方がいいかもしれません。
しかし、せっかちな患者さんは2・3回で全快しないと焦って、これはただ事ではない!などと、あわてて手術室の扉を叩く方もおられます。人生の貴重な時間を無駄にすることもありますので慎重に判断されますように。

ただ、これだけは何度も言いますが、「あくまでも筋肉が痛い」のであって、骨や軟骨を削っても何も解決しません。

もし、あなたの周りで手術を受けて痛みが取れた人がいるのなら、その人は運のいい人です。 あなたが普通の運の持ち主ならば、たぶん痛みの状態は変わりません。
もし、あなたが運の悪い人ならば、その後の人生、とんでもないことになるかもしれません、後悔しますよ。

・・・別に新興宗教の教祖様のお言葉でもありません、私が言っているだけのことで・・・。


「トリガーポイント・マニュアル-筋膜痛と機能障害Ⅲ」監訳:川原群大 エンタプライズ株式会社刊