「背骨がずれている、曲がっている、他院でそう言われたことがある。」

時たま患者さんから聞くことがあります。

背骨を構成する椎骨と椎骨は前縦靭帯、後縦靭帯、その他、強力な筋肉でつながれています。日常生活の運動範囲内ではそう簡単に背骨がずれるということはありえません。
あるとすれば、交通事故、墜落などの強力な外力が加わる不慮の事態に遭遇した場合です。空手や、プロレスで背中を蹴られ、スッポリと背骨が外れたなどという話は聞いたことがありません。
疑わしい疾患の場合、整形のドクターはレントゲン写真に細かいメジャーを当てて、手術の適応をミリ単位で計測されます。

背骨を皮膚の上から触り、「ここがずれている」と指摘できる時は、たぶんその患者さんは脊髄損傷を起こしており、半身麻痺、もしくは全身麻痺で生死の境にいるときです。そんな患者さんは接骨院でお目にかかることは一生ありません。

それでは、そういう診断を見た目は健康そうに映る人に言い得る先生方は、ミクロン単位、ミリ単位をすべて指先で感知できる精密機械の研磨技師のさらにトップクラスの職人に匹敵するような感覚を持っておいでるのでしょうか?
ましてや棘突起(背骨の突起、それですら皮膚、皮下組織、脂肪組織、筋肉組織や筋膜の下、椎体はその数センチ下)を触るだけで。
だとすれば、ものすごい技術の持ち主です、いや、超能力的才能としか言いようがありません。まさに国家の宝です。他の分野にも活かしてもらいたいものです。 

骨が曲がっている、これは当たり前のこと。
脊柱を横から見ればS字状になっており、正面から見ると胸椎付近で少し曲がりあります。
内臓は左右対称ではないのですから当然骨格にも影響を与えます。心臓や大血管の位置の関係でレントゲン上、真っすぐになっている脊柱はありません。
筋肉も関係してきます、左ききの人は脊柱がわずかに左に寄っていることが多いようです。やはり利き腕に力を入れるので、筋の収縮によりそちらへ引っ張られるのでしょうか。

よく診察室で見かける骸骨の全身模型は、吊るしてあるからきれいな直線を保っています。その骨格模型に不均等な容量の臓器やその脇を走る非対称の大血管の走路を確保すれば、やはりわずかに曲がった背骨にならなければいけません。
それに加えて成長期の姿勢、成人してからの仕事の種類などにより、まっすぐな背骨の人はまずいないでしょう。その人その人の生活環境に適応した曲がり方をしているに過ぎません(病的な側湾、それも内臓を圧迫するようなものを除く)。 

「ほら、ここが曲がっているからですよ」
と、何やら無理やり症状に関連付けるかのように説明される先生もおいでと聞きます。そして、不思議なことに結構それを信じるかたもおいでます。
治療された方はされた方で、「ああ、これで背骨が真っすぐになってすっきりした」という人もおられます。筋肉の瞬間的なストレッチにより楽になる人もいるでしょうが、いわゆるプラセボ効果でしょうか?

ところで、背骨がゆがんだ、曲がっている、だから直します、と言われますが、たとえば骨折なら整復前、整復後と病院の現場や学会誌、いろいろな本でレントゲン写真を目にする機会がありますが、不思議なことにそれなる背骨の矯正前と矯正後のレントゲンを見た記憶がありません。見たことがないから、こうして書けるのかもしれませんが、一度見てみたいものです。 

指がボキボキと鳴ります。
これは簡単に言えば関節内の炭酸ガスのはじける音だと文献にあります。
背骨も捻ったり、押さえたりとストレッチの途中でボキボキ鳴ることがあります。筋肉の擦れる音か、椎間関節での指と同じ現象なのかはいまだわかりません。ボキボキ鳴ったからといって特別凝っているとか、そこが悪いわけではありません。その気になれば背骨はどこでも鳴らせます。

わたしの背骨はゆがんでいる、曲がっている、やたらボキボキ音がすると、そんなことが気になる人はラジオ体操でもしましょう。あまり神経質にならないようにするのが一番良いようですよ。