「ナンコツ」
焼肉屋さんのお話ではないです。

今迄も何度となく書きましたが、相変わらず患者さんの「軟骨信仰」は根強い人気があるようです。膝が痛ければ「軟骨が擦り減っているから」、腰が痛ければ「軟骨が出ているから」、あげくは「出ている軟骨が神経を圧迫して痛い」などと、いまだに迷信じみた考えを持っておられます。特に高齢になるほどに、信じて止まない方々が多いようです。
何十年と雑誌やマスコミ、病院の診察室でそういう情報を得ていた訳ですから、今更「それは間違いですよ」と申し上げても、聞く耳もって頂けないのもわかります。
ひと通り説明して、軟骨が痛むことはない、「筋肉の痛み」である、と納得していただいても、次の日には「やっぱり軟骨だからグルコ○ミンでも飲めばいいんですかねぇ」・・・どうしてもナンコツがお気にかかるようです。グルコ○ミンを飲んだところで特に害もありませんし、「それはお好きにされていいですよ・・・」と、なんとも不毛な日常が繰り返されます。

その点では、若い方はそういう誤った情報にさらされる期間が短いためか、比較的すんなりと受け入れてくださるように感じます。
今一度言いますが、「痛み」の発生するメカニズムは、皮膚や筋肉に張り付いている神経線維の先っぽの細胞(ポリモーダル侵害受容器)が特定の物質に反応して、その細胞内で微弱電流が生じ、その電気が神経を伝わり、脊髄や脳へ行き、そこで「痛み」と認識されます。
決して気のせいなどのいい加減なことではなく、化学反応で起こる証明された現象です。そして、反応するのは「先っぽの細胞」です。
木でいえば葉っぱの部分であって、枝の部分ではありません。枝にはそんな機能は無いので、そこを刺激しても何の反応も起こりません。ましてや、圧迫などによりどうこうなるなんて事はありません。

では、その痛みを伝える元となる「特定の物質」はどこから出てくるのでしょうか?
筋肉がこわばると、雑巾を絞って水が染み出すように筋線維が傷んで、特定の物質がにじみ出ます。そのこわばった筋肉付近の神経線維の先っぽの細胞(ポリモーダル侵害受容器)がそれに反応するのです。
軟骨が擦り減っても、軟骨が神経を押さえても、特定の物質が出ませんから反応は起こりません。反応が起こらないということは電気が発生しないということですから、軟骨から脳へ「痛み」の信号が行くことはありえないということです。

ちなみに、軟骨が擦り減っても下から神経がニョッキリと顔を出すようなことは無いです。そもそも軟骨自体に神経はありませんので、その説明以前の問題ですが・・・。

・筋肉の筋繊維が傷む⇒特定の物質がにじみ出る⇒付近の神経線維の先っぽの細胞が反応し微弱電流が発生⇒電気が神経を伝わる⇒脊髄や脳に到達⇒痛みと認識

・ナンコツが傷む(?)⇒特定の物質が出ない⇒⇒⇒痛みの認識はない

高齢の人と若い人では治る早さが違うと言いますが、体力的な事はもちろん、そのような誤った情報が脳へ刷り込まれている強さも大きく関係していると思います。

骨や軟骨が悪いと言われた以上、それをどうにかしないと何をしても解決しない。不安が脳にストレスをかけ、交感神経の緊張を呼び、そのために末梢血管の収縮をきたし、筋肉内の血行が悪くなり、さらに筋肉のこわばりを生じさせる。見事な痛みの悪循環が出来上がります。

こうなると頭の中は、「神経が通る骨の隙間がまたいっそう狭くなったのか」とか、「またいっそう軟骨が出て神経を押さえている」なんてことでいっぱいになります。そしてありがたいことに、さほど意味もない手術の日程が決まり、権威のある先生に切ってもらった満足感で痛みが消えることもあります。

世にこれを『 暗示 』と云いますが、手術によって痛みが消えるもうひとつの理由は、手術中の何時間にも渡る麻酔で筋肉がゆるんで楽になるからだそうです。

運の悪い人は痛みの度合いは変わらず、もしくは何日かは軽減しても結局ぶり返して、こんなお祓いみたいな事を2度、3度、4度と繰り返します。さすがに3,4度目になりますと、ガッチガチの固定術で背骨をボルトで留められるケースが多いようですが、固定術をしてスッキリ治ったという人といまだにお会いしたことはございません。

一体、何が目的の治療なのでしょうか?私のようなヘッポコ接骨師には到底わかりかねる何かがあるやもしれませんが・・・私から見れば、ここまでしてしまうともう後の祭りです。

ところで、こちらの図は腰やお尻の筋肉を傷めた時に出る痛みやしびれの典型的なものですが、この時にMRIなどで腰に狭窄やヘルニアが見つかると、それが原因と決めつけられる事がほとんどです。・・・今の医療では。 

ご用心ください。