「ガードル症候群」

もちろんこんな病名はありませんが、(試しに検索したところ2,3件この名前が出ていました。こんなことを言うのは私が初めてだと思いましたが、お暇な方がおられるようです。)思わずカルテに病名として書きたくなるような疾患です。

「おもに中年以降の、お腹のあたりが少々ふっくらしてきたと自覚し始め、矯正?下着を装着しているご婦人に多い“のぼせ、肩こり、腰痛、冷え、むくみ、不眠”等等、いかにも更年期障害を思わせる症状を呈しているものである。」

と定義付けたくなるような「不定愁訴」と呼ばれるものです。

あくまでも私の経験での話ですが、腰周辺の冷え、痛み、肩こり、足の冷え、あるいは足が熱い、顔がのぼせる、やたらと首から上に汗が出る、と訴えられる女性の方の共通点、それは何層にも重ねられた下着をはいておられること。
マッサージ、電気を当てるために少しそれをずらそうとしますが、いかんせん、皮膚と下着の間に指一本も入らないようなきついガードルを着けておられる方もおいでます。
ましてやその圧力が全身にかかるようなボディスーツなるものを着けられている方(あなたはガンダムですかっ!とツッコミたくなるような・・・)、考えてみてください。
もしそれほどの圧力を首にでもかけたなら頚動脈、静脈を圧迫して5分は持たずに窒息死してしまいます。

比較的絞束に鈍感な、脂肪層に覆われている腰周りならこそ、その絞束力に耐え得るのです。
ご本人は締め付けられているとか、きついとかは思わないかも知れません。しかし確実にじわじわと皮膚の真皮層、脂肪層、筋膜、そして筋肉まで圧力が加わっています。

当然、筋肉表面に分布している毛細血管をも締め上げます。
その結果筋肉内に入る血流は減り、あとは「筋筋膜性症候群」に書いた通りの悪循環を繰り返します。もちろん下半身の血管や神経の集まる腰部で血液遮断もどきのことが行われているとなると、下半身のむくみや冷えは当たり前の如く起こります。

要は自分で自律神経のバランスを確信犯的に崩しているという他ありません。
きつい下着をつけ、腰やあしが冷え、寒いのでさらに重ねてしまう。そして締め付けが一点に集中する、これがすべてです。

手の器用な患者さんで、自分でガードルの腰の後ろの部分をV字型にして、圧を減らして腰の冷えと痛みが素早く改善したという例もあります。
癌や重篤な病気の人は、とにかく腰周りのゴムの締め付けを嫌がられます。

若い人は矯正の必要がないのでほとんどゴムが重なるような着け方はしていません。また、冷えは大敵などとの認識もないでしょうから用心に何枚も履くという習慣もありません。
それでもやはり若い女性が同じ症状で訴えてこられます。その場合は筋肉が小さいことによるものです。

体の熱源は筋肉です。ダイエットなどをして細い人は(細いのが良いと思う自体がそこで間違いを犯しているのですが)、熱源がないから当然冷える。
ダイエットに熱心な方、好きでされていることですので止めるよしもないのですが、そのような方でむくみや冷えを訴えられる方には「カイロでも張って暖かくしてください。」としか言いようがありません。 あと3、40年後には確実に骨粗しょう症の診断が下りますよ。

とにかく、重ねて血流を悪くするから訳のわからない症状がでるのです。
一時期、下着は着けずに寝る健康法なるものがメディアで紹介されていましたが、そこまで極端なことはしなくてもいいですから少しだけ皮膚や筋肉を開放することを心がければ快方に向かう方もたくさん出ると思われます。

ほんのわずかな見た目を取るかはどうかはやはり本人次第ですが、言わせてもらえばほんのかすかにも見た目には差がありません。