踵(かかと)の痛い人、結構見かけます。
つま先をチョンチョン着いて、診察室に入っておいでます。

直接踵に外傷を受けた覚えがないのに、押さえても痛い、足首を動かしても何やら違和感あり痛い、そういう場合は「ヒラメ筋」が原因であることがほとんどです。
ヒラメ筋を押さえると、ほとんどの患者さんに圧痛があります。押さえられて初めて、その部分の硬結に気づかれます。そこが悪いわけです。


「ID触診術」鈴木重行・平野幸伸・鈴木敏和著・エヌ・ティー・エス刊

 

「太っているから踵に負担がかかったのでしょうか?」
よく言われますが、踵には関係ありません。ふくらはぎにかかる負担が問題なわけです。

たとえばスポーツでのジャンプの繰り返し、あるいは冷房でのふくらはぎ(下腿)の冷えによる血行障害での筋肉のこわばり。
スポーツによるものは、ほとんどがつま先で地面を蹴る動作によるものです。要は、下腿と足底の筋肉の急激な収縮の反復による筋線維の損傷、これが瞬間的に大きな範囲でおきれば、「肉離れ」、「筋断裂」などと言われるわけですが、その時は下腿、アキレス腱部にそれなりに内出血や圧痛がありますので本人もすぐにわかります。
が、そこまでに至らず時間をかけてじんわりと下腿筋に負荷がかかり、それが蓄積された時は、何をした覚えも無いのに踵や足底部が痛い、ということになります。


「トリガーポイントと筋筋膜療法マニュアル」
Dimitrios Kostopoulos & konstantine Rizopoulos著・医道の日本社刊


地面を蹴るという動作は、足の親指の「腱」に力がかかります。
「腱」は簡単に言うと筋肉の細くなった部分です。その足の指を曲げる腱が、親指の裏から内くるぶしの下を通り、ヒラメ筋の真下に沿って膝の裏に付いています。
下腿を通る部分で硬結と圧痛がはっきりと認められますが、それが指の腱かヒラメ筋かと聞かれれば、なにぶん指の感触と位置関係だけでの判断ですので、どちらかは特定できかねます。
さらに足の裏の細い筋はヒラメ筋の上にへばり付いていますので、よほど念入りに触診しないとわかりかねます。このへんの説明をするのがめんどうなので、うちではひっくるめてヒラメ筋で通しています。(治療部位も治療方法も変わらないので・・・。)

この症例は、 季節的には夏場が多いようです。やはり冷房での冷えに加え、水分不足、塩分不足が合わさって、筋が固まりやすい条件が揃うのではないかと思われます。

治療は筋肉内の硬結、つまり、ヒラメ筋の硬くなって紐のようにピンと張っている部位を治せばいい訳ですが、それを触診もせずに足の裏が痛い、踵が痛いとの訴えで足底筋膜炎、足底腱鞘炎などと、やたら「炎」をつけていかにも筋や腱が炎症を起こして腫れ上がっているような感じをいだかせ、足の裏だけを処置して終わる先生もおいでます。
処置といっても踵に注射を打つわけですから、ちょっと人生で経験できないような痛みはあるでしょう。

それにこのヒラメ筋を痛めますと嫌なことに「仙腸関節」、つまり整○外科の先生の一番ヒットしやすい腰部への痛みも関連痛としてでることがありますので、まかり間違えば腰椎をいじくりまわされることも無いとは言い切れません。
最近は、腰が痛くて、ふくらはぎが痛くて、歩くのが苦痛ならば、「脊柱管狭窄症」の診断が流行りみたいです。ふくらはぎを痛めると歩行に障害がでるのがあたりまえなのに、なぜ腰に目が行くか?っていうところですが・・・。
どういう病名がつくかは「運」です。

自分でできるストレッチは、踵を床から上げずにしゃがんでください。できれば左右の踵をくっ付け、グイグイと膝の上を押してください。10分ぐらいそうしてしゃがんでいると、足首の筋肉が縮んで足の甲あたりがしびれてきますので、今度は正座でもして、すねの筋肉を伸ばしてください。

根気良くやってみて治らない時は受診してみてください。
どこへ受診されるかは自由です。運だめしも自由です。
少々運がよければ踵へチクリ、悪ければ腰の手術。ちょっとドキドキしますね。